猫の伝染性腹膜炎(FIP)の診断と最新治療【2020年】

猫伝染性腹膜炎(FIP)とは

伝染性腹膜炎 腹水

猫コロナウイルスの強毒株が原因でお腹や胸に水が貯まる(腹水や胸水)ウェットタイプや肝臓・腎臓・脳・眼・腸管などに肉芽腫(にくげしゅ:慢性的な炎症に基づいて生じる腫瘤)を作るドライタイプなど多彩な症状を示し、ついには死に至る死亡率の高い病気です。

当院でも年に数件遭遇しますが、1歳未満の若齢の猫や中~老齢の猫に発生することが多い病気です。病気の初期には、原因不明の発熱(39度以上)で食欲不振を訴えたり、気付かない場合には500g~1kgも痩せてから来院される場合があります。

子猫での発生も多いので、初期だと子猫なので食欲もそれほど落ちず発見が遅れる場合があります。この病気の場合、しばらくしてお腹が大きくなったとか(腹水)、皮膚が黄色くなってきた(黄疸)等ではじめて病院に連れていかれることもめずらしくありません。

症状

ウェットタイプ・・・腹水・胸水の貯留、持続性の発熱、食欲不振、黄疸
ドライタイプ・・・持続性の発熱(39~40℃以上)、内臓の肉芽腫性炎による多彩な症状(てんかん発作、腎不全、肝不全、消化器症状、眼のブドウ膜炎)

猫伝染性腹膜炎の診断法は?

以前は血液によるコロナウイルスの抗体検査も良く行われていましたが、病原性の弱い腸コロナウイルスでも引っかかってしまうため精度が低く、誤診も多くありました。

最近では血液や腹水の遺伝子検査をすることが多くなりました。腹水や持続性の発熱、黄疸など特徴的な臨床症状を合わせることで以前より早期に精度の高い診断が可能です。

最新の診断方法は動物用検査会社のマルピーライフテックのホームページに掲載されています。こちらのリンクからどうぞ⇒FIP診断フローチャート

猫伝染性腹膜炎の有効な治療法はあるのか?

他院で匙を投げられ、わずかな希望を求めて当院に転院されてくるオーナー様もいます。従来はステロイド剤などの免疫抑制剤を中心に症状の緩和と進行の抑制を期待することが治療の要でした。しかし、2019年アメリカの大学が論文発表した新薬が最近のFIP治療で一番ホットな話題となっています。

当院では、様々な方面から有効といわれている情報をもとに次のようなお薬で飼主さんのアシストを行っています。

副腎皮質ホルモン(ステロイド)・・・免疫抑制剤・食欲改善。治療薬のスタンダード。
インターフェロン・・・抗ウイルス薬・免疫調整
シクロスポリン・・・症状を和らげる可能性がありますが、情報量や認知度は低いです。通常の使用量の2~4倍量を使用するため、治療コストは高めです。
イトラコナゾール・・・もともと皮膚糸状菌(カビ)の治療薬である抗真菌薬にFIPウイルスの増殖を抑制する可能性があることを北里大学の宝達 勉教授らのグループが発見。稀に肝障害の副作用が出ることがある。
膵炎の治療薬のフオイパン(カモスタットメシル)にコロナウイルスの増殖を抑える効果があるという論文があります。比較的入手しやすいお薬です。
GS-441524・・・2019年2月にカリフォルニア大学デービス校の獣医研究チームが論文で発表(google翻訳で日本語に直せます)した抗ウイルス薬です。論文を見る限り非常に有望なお薬のようです。国内の正規ルートから安心して処方できる日が来ることを待ち望んでいます。

伝染性腹膜炎 ステロイド    

FIP治療への希望

 GS-441524をベースにしたと考えられるFIP専用治療薬がMUTIAN X(ムティアン)という製品名で中国で流通しています。しかし、日本では未承認薬の為、法律上様々な問題があり獣医師資格の取り消しもありうるとのことでこのお薬の導入に慎重な獣医師が多いのです。また、広告に制限があるため獣医師に対しての認知度も低いです。
 この製剤の動物病医院での使用については当院のコラムをご覧になってみてください。
    関連記事:不治の病に希望の光が~FIP治療の最新事情 (2020年1月27日更新)
 非常に難しい難病ですので、疑問に思うことはどんなことでもご相談下さい。最新の情報を元に最善の治療をさせていただきます。
院長の出身校である北里大学でもこの病気の新しい治療法・ワクチン開発に全力で取り組んでいます。いつかこの病気が不治の病で無くなる事を飼主様と同じ気持ちで祈っております。

【FIP関連のサイト】

nagoya-endo.com・・・FIPについては一番詳しいサイト。人間のお医者さんが執筆。
ケーナインラボ・・・FIPウイルス遺伝子検査
マルピーライフテック・・・FIP診断フローチャートあり

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