トリミングが必要なワンちゃんを飼われている方には、動物病院でのトリミングサービスは喜ばれるサービスの一つです。当院でもトイ・プードルやシーズーを飼われているオーナー様から問い合わせをいただくことが良くあります。
実際、トリミングサービス併設の動物病院は非常に多くて、とある情報誌によると40%前後の動物病院がトリミングサービスを行っているそうです。船橋市の動物病院でも2件に1件くらいはトリミングを併設しているようです。
トリミングの技能をもつ職業の方をトリマーといいますが、日本で登録されているトリマーさんは全国で15,000人ほどいらっしゃるそうです。だだし、資格がないとトリミングを行ってはいけないというわけではないので、動物病院では動物看護師がトリミングを行っていることも多くあります。動物看護師を育成する専門学校では、動物看護師育成コースでも初歩のトリミング技術を学べる機会がありますので、足回りのカットや爪切りなどのグルーミングはトリマーでなくても行えるようです。
トリマーになるには、通常トリミングを学べる専門学校で学習しますが、2年間専門的にトレーニングしたトリマーの卵と、ちょっと実習しただけの動物看護師では本来別物といっていい技術の違いがあります。
トリミングを行っている規模の大きな動物病院では、専門のトリマーを採用してトリミングサロンを併設しているケースもあります。私の勤務していた動物病院では、専門のトリマーさんが5名ほどおりましたが一日中トリミングだけを行っていました。しかし、一般的には診療の合間に動物看護師がトリミングを行っているスタイルが大半かと思います。
求人ではトリマー兼動物看護師という求人になるのですが、大概はトリミングの学校を卒業した方に、動物看護師としての仕事を覚えてもらうケースが多いと思います。新人の動物看護師よりトリマーさんの方が動物の扱いが上手だったりします(犬に限りますが)。逆はなかなか養成が難しいです。
信頼している先生のいる動物病院だからトリミングも安心。というのが果たして正解かというと、実はそうでもなかったりします。獣医師はトリミング技術に関しては全くの素人なので、動物看護師や不慣れな新人トリマーにトリミング技術を指導することができません。トリマーさんが皮膚や体の異常に気付いたときには獣医師に報告しますが、そんなこともなければ原則獣医師はノータッチです。
また、診療の合間にトリミングを行っています。あくまで診療が中心である動物病院では一日に行えるトリミングの件数は一人につき多くて2~3件程度。やはり一日中トリミングのみを行っているトリミングショップのトリマーさんとは技術的にも差が出て当たり前と考えられます。
しかし、もちろんメリットもありまして、動物病院でのトリミングサービスはトリミングサロンと比べるとやや料金が抑えられていたりします。実際には、動物病院でのトリミングでの利益はごくわずかでほとんどが来院促進や顧客へのサービス目的であるようです。同期の院長先生の病院ではトリミングを行っていますが、トリマーさんの確保にいつも頭を悩ませていますし、人件費ばかりが増えてほとんど利益がないそうです。
実は当院でもトリミングサービスを提供できないかと思ったこともあります。最初のトリミング経営の書籍は以前トリミングサービスを考えたときに勉強した時のものです。実際にトリミングを行っている動物病院の先生方の意見はマイナスイメージなものも多く、はじめてはみたものの気苦労ばかりで辞められるなら辞めたい。やらなければよかったなんて話もちらほら聞こえます。
同じ動物を相手にするといってもなかなか本職以外のものを経営するのは難しいんだという考えになりました。 モンスタークレーマーに悩まされて体調を崩して廃業したトリミングショップもあるとか(怖)。
現在のところ、診療以外に脱線する余裕がないので、しばらくトリミングサービスを行う予定はありません。問い合わせいただくたびに申し訳なく思うのですが、診療行為に専念したいと思いますのでどうぞご理解いただけたらと思います。本当にトリミングサロンの方が上手ですから。