あおぞら動物病院は千葉県を中心に茨城県、東京都東部のFIP患者様の治療を担当させていただいており、FIPの治療薬であるMUTIAN(ムティアン)で300症例以上の猫ちゃんを治療させていただきました。このたび、より多くの命を救いたいと考え、FIP治療のもう一つの武器であるモルヌピラビルでの治療を開始いたしました。
以前のコラムはこちら(↓)からご覧になれます。
【お願い】少しでも助かる可能性を高めるために
助かる・助からないかは1分でも1秒でも早く治療を開始できたかにかかっています。時間とともに急激に貧血が進行し、神経症状(痙攣や運動失調)が発生してきます。あと1日早ければ助かったかもしれない命が消えていくのを何度も目にしています。
ホームドクターでFIPと診断がおりていないけれど、可能性が高いとお話があった時点でサポートできる場合が沢山あります。一日でも早くご相談ください。
モルヌピラビルって何?
人の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬として登場したお薬(モルヌピラビル:molnupiravir)が、猫のFIP(猫コロナウイルス)の治療に効果があることが分かっていました。MUTIANと比較して入手しやすいことが特徴ですが、ヒト用製剤を流用しているため、猫に合わせた調剤がむずかしいことが難点です。
モルヌピラビルでのFIP治療の費用について
MUTIANでの治療では、2㎏の猫ちゃんで50~100万円ほどのお薬代が必要でした。モルヌピラビルではお薬の費用だけを考えた場合、MUTIANの1/4程度(13~26万円ほど)で治療可能です。同じ体重でも費用に差があるのは、FIPの重症度によって必要なお薬の量が違うからです。
※初回のFIP鑑別診断、計6回の効果判定・副作用確認のため、お薬代の他に検査費用や一般治療費で15~20万円(ペット保険利用可能)ほどの費用が必要になります。
※投薬期間は通常84日(約3カ月)になります。モルヌピラビルは、1日分から処方可能ですが、通常次回検査までのお薬を処方しております。費用は検査・処方時にいただいております。
モルヌピラビルとムティアンの違いは?
FIP治療においてMUTIAN(ムティアン)の有効率が高いことはすでに各方面に伝わっています。しかし、非常に高価であることに加え、中国から特殊なルートでしか入手できないため、処方できる施設は当院を含め全国でも一部だけでした。
それに対し、モルヌピラビルはヒトの製剤を流用できるため入手することが難しくありません。そのため、治療経験の少ない獣医師による治療効果の差や再発率の上昇も報告されています。FIPの治療知識のある獣医師が対応すれば、MUTIANと比較しても遜色ない治療効果が得られます。
あおぞら動物病院では多くのFIP治療実績がございます。
モルヌピラビルがMUTIAN治療に劣る点
MUTIANと比較して、費用面ばかりに目がいってしまいますが、以下のようなデメリットがあります。当院では、メリット・デメリットで判断してMUTIANでの治療を選ばれる方も半分ほどいらっしゃいます。
・ | 12時間おき一日2回の投薬が必要(MUTIANは24時間おき) |
・ | 注射剤が無いため、経口投薬が不可能な重症例では適応外 |
・ | お薬のサイズ(カプセル)が大きい(2号サイズのカプセル) |
・ | MUTIANのような再発時の無料補償制度が無い |
・ | MUTIANと比べると副作用や再発の発生率などの情報が少ない |
あおぞら動物病院での診療の流れ
来院までの流れ
診療の最初に、当院での治療実績と今後に行われる治療の流れを説明しています。治療法が複雑なため、必ずお電話でご予約を取っていただき、午前・午後の早い時刻での来院をお願いしています。
検査・結果の説明
1時間ほどで全ての検査が終了します。PCR検査や抗体価の検査は外部に依頼するため、FIPと確定するためには最低でも2日~5日ほどかかります。腹水や胸水が貯まるウェットタイプと呼ばれるFIPでは他の疾患との鑑別がしやすく、進行も早い為に、オーナー様の希望により結果を待たずに治療開始することもあります。モルヌピラビルはFIP以外の病気には全く効果が無いため、治療に対して良好な反応が見られればFIPの可能性は非常に高くなります。
モルヌピラビルの必要量
モルヌピラビルでのFIP治療の第一人者である佐瀬先生の論文によりますと、薬用量はウェットタイプで10㎎/㎏ 12時間おき、ドライタイプでは15~20㎎/㎏ 12時間おきで細かく分類されています。臨床的な特徴と、貧血の進行具合で早期~後期を分類して必要量を決定します。必要な量が足りない場合に、効果が不十分であったり、投薬終了後の再発の率が上がると報告されています。
機械(分包機)で分包されたモルヌピラビルは、1包ずつのモルヌピラビルの含有量が最大20%ほど不正確になることが分かっているため、あおぞら動物病院では手作業でカプセルに封入しています。あおぞら動物病院では独自に封入した、モルヌピラビル20㎎、10㎎、5㎎を組み合わせてオーダーメイドの処方を行っています。
投薬方法のレクチャー
空腹時に服用することで最大の効果を発揮するため、カプセルのまま投薬できるように病院内でレクチャーを行います。投薬することに慣れていない飼主様が多いため、整腸剤を詰めたモルヌピラビルと同じサイズのカプセルを使って実際に投薬の練習をしていただいております。ほぼ全ての方が当日からご自宅で投薬できるようになっていますのでご安心ください。
初日以降のスケジュール
毎日決まった時間に、一日2回×84日間投薬していただきます。体調に問題なく、体温の平常化と食欲の改善が確認できましたら次回の来院は1週間後になります。1週間分に必要なモルヌピラビルのカプセルを処方させていただきます。
当院では副作用の確認のために、1週間後の検査、効果の判定の為に2、6、10週目の検査を行っています。主に、貧血や炎症マーカーの改善、A/G比が上昇しているかをチェックしています。腹水や胸水の減少やリンパ節のサイズもチェックします。
10週目(70日目)の検査では84日で投薬を終了できるか、延長の必要があるかを判断しています。再発が無ければ投薬終了1か月後、3か月後に検査を実施し、完解の判定をしています。
あおぞらどうぶつ病院について
千葉県船橋市夏見1-10-31(駐車場8台あり)
TEL 047-424-8370
HP:https://xn--hhrx3xt0jt8h4kenrxmi6a.com/
FIP治療実績 300件以上(2025年1月29日現在)
各種クレジットカード利用可能