動物病院の医療設備としては無くてはならないものにステンレス製の入院ケージがあげられます。
わが子が入院中にケージの中に入っている姿をご覧になったことがあるかもしれませんが、ケージの床にバスタオルやペットシーツを敷いて水や食事を入れるだけでいたってシンプルな入院室となります。
人間でもお金を払えば大部屋ではなく個室を選べると思いますが、動物さんの場合に相部屋とはいきませんので完全個室制です(笑)。
入院の主な目的は、通院では治療が困難な病気に対して静脈点滴を行うために利用されます。また手術後に安静にしてもらう目的もあります。
狭くて可哀そうに思われるかもしれませんが、入院中にしっかり安静にしてもらうことも大切な治療です。広いスペースで自由にしてしまうと、点滴の管がグルグルと絡まったり、せっかく手術した傷に悪影響が出たりする可能性もあります。
また入院中の動物は、下痢や嘔吐、ウイルスや寄生虫性の伝染病もありますので、頻繁に掃除ができて、消毒薬で浸食されないようにステンレスで作られています。
脱走防止のために、扉も2段式でロックがかけられたり、タイプによっては中の仕切り板をはずして大型犬にも対応できたりするような構造があったりします。
ケージ1部屋ごとに、断熱と防音の目的で緩衝材のスタイロフォームという素材が入っています。
参照:ダウ加工さま
酸素吸入が必要な場合や気化した薬剤を吸入させるネブライザー治療の際には、柵の部分を透明なプラスチックの扉に付け替えたり、専用のICUユニットに交換することができます。
ステンレス製で丈夫に作られているために、数十年の耐久性がありますが、1部屋のスペースにつき約10~15万円ほどの価格とそれなりの面積を占有しますので、動物病院の限られたスペースでは開設前(病院設計の段階)からじっくり配置を考える必要があります。
当院では開業時から使用している本郷いわしやというメーカーのステンレス入院ケージを使用しています。病院移転時にパーツを増やして増室しましたが、そのように自由に構成を変えることができます。
都市部では敷地の面積からあまりたくさんの入院ケージを置けないこともありますが、土地が安い地域で頑張ってケージをたくさん入れたのに、患者が入らない・・・という悲しい事態にはならないでほしいものです。
使用頻度 高い
お気に入り度 普通
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