『ソノサージ 超音波メス』と様々な血管シーリングシステムの紹介 

超音波メス ソノサージ

リンパス製の『超音波手術システム SonoSurg(ソノサージ)』という超音波メスです。人の医療ではラパロ(腹腔鏡下手術)で使われる最新の医療機器の一つです。

オリンパスはデジタルカメラのシェア日本第5位(2015年)の他に、医療用では内視鏡で世界一(世界の70%シェア)、光学顕微鏡でも1~2位の医療分野になじみの深い企業です。

ソノサージってどんな医療機器?

外科手術では金属製の一般的なメスの他にも超音波メスや電気メス、レーザーメスなど様々なメスが手術に用いられます。

 金属メス以外を使うそれぞれ共通のメリットは、金属製のメスと違い切開と同時に止血(凝固止血)を行うことができるのが特徴です。金属メスで組織を切断すれば当然血管から出血しますが、超音波メスやその他の設備を使用することにより、ほぼ無出血で組織の切断が完了します。

電気メスは生体に高周波電流を流しそこに生じた抵抗による熱エネルギーによって組織の切開と凝固を行う医療機器です。レーザーメスは医療用のレーザー光線によって熱を発生させて切開・凝固を行う装置です。

ソノサージのような超音波メスは超音波振動を組織に与えることによって組織を凝固・切断します。電気メスやレーザーメスに比べて低い温度(100℃前後)で凝固できるため、周囲の組織に対してダメージが少ないことが大きなメリットになります。

通常、切開→出血→出血部位の圧迫あるいは縫合糸による結紮が必要ですので、それを省くことにより手術全体を通すと手術時間を半分以下に短縮することも可能です。

 血管シーリング能力ですが3mmまでの血管が凝固切断できます。凝固後自然に切断されるので、凝固後にハサミで切断する手間が省けます。実際には10kg以下の小型犬や猫が多いため、子宮蓄膿症やよほどの発情中の血管でない場合は3mmのシールで十分かと思います。5mmでも大丈夫との話もありますが、メーカーとして3mmまで大丈夫といっているので安全域も含んでいるのでしょう。

当院も含めて獣医医療での腹腔鏡手術はそれほど進んでおりません。船橋市の動物病院でもこの装置を導入している動物病院はありますが、腹腔鏡手術を行っているわけではありません。

未熟な医師が腹腔鏡手術を行って数名の死者が出ていたとニュースで報じられましたが、人間の医師でも熟練が必要な手術や設備を生半可なトレーニングで獣医師がチャレンジしてしまうのは非常に恐ろしいことです。もちろん、しっかりとトレーニングをして腹腔鏡下手術をおこなっているベテラン獣医師の先生も全国にいらっしゃいます。

一般の獣医師がこの装置を使用する目的は、近年、避妊や去勢手術の際に発生する異物反応性肉芽腫※1という合併症を回避するためです。この医療機器で糸を使わずに血管をシール凝固することが可能です。

また、それ以上の恩恵として手術の安全性向上時間の短縮が非常にありがたいメリットです。

 異物反応性肉芽腫・・・近年、特定の犬種(ダックスフンドやチワワ等)を中心に手術時の糸を原因とする腫瘤(しこり)の発生が報告されています。特に、最近では使われなくなってきた絹糸(けんし)による発生が問題視されています。

動物病院ではどのような手術に使われているの?

当院では比較的日常的に行われている避妊手術や去勢手術にも使用しています。

動物病院ではほぼ毎日のように行われている不妊手術ですが、決して簡単な手術ではありません。健康な動物にメスを入れて卵巣や子宮という内臓を摘出するのです。実際には卵巣は背中側にある臓器なのですが、一般的にはお腹側を切開してアプローチします。かなり奥にアプローチが必要になります。

小さい傷口で行われる方がよろこばれる傾向があるため、1センチ程度の切開口からすべての操作を行います。ここは獣医師の職人技です。

健康な体にメスを入れるということは、失敗や後遺症が絶対に許されないということです。もちろん失敗することはありませんが、機械を治すのと違いますし、人間が行っている以上100%の絶対はあり得ません。

そんなプレッシャーを感じながら毎日手術を行っていると、できるだけ安全に、短い時間でというのは手術を受ける側にはもちろんですが、術者にとっても非常に大きな恩恵となります。

ソノサージの気になるなる価格は?

本体価格約250万円とかなり高価な医療機器ですが、耐久性もあり、年間200回前後使っていると思いますが、現在まだ故障はありません。当院では2セットをオートクレーブ滅菌でまわしています。大阪の内視鏡手術で有名な江原 郁也先生の講演でも1年くらいは使えるとのことでしたので私の病院では5年くらい使えるかもしれません(笑)。

追伸:ソノサージのデバイスですが、2017年5月17日現在で2本壊れました。2015年に2本購入し、年間に1本で100~150件の手術に使用していましたのでそのくらいが寿命かもしれません。1本はデバイス先のジョー(顎)の部分の閉開に使われている細い金属線が断線しました。もう1本は内部のゴムが劣化して切れたため挿入するブレードの棒が固定されなくなってしまいました。オートクレーブで滅菌するよりガス滅菌の方が寿命が延びると思います。また、シール完了後もしつこく熱を加えると受け側の白いプラスチックが焦げて劣化が早まります。メーカーに確認したところ、消耗品(デバイス)の破損での修理は行っていないとのことでした。デバイス先のみの購入で約20万円です。ちょっとコストについて不満が出てきました。

気になる記事を発見しました。恐らくデバイスの価格だと思うのですが・・・。これって動物病院と人の病院との価格差があるってことでしょうかね・・・。

サンダービートやソノサージは大変優秀なデバイスではありますが、お値段が高いところが残念なのです。

お値段は各病院によって仕入れ値が違いますが、大体のお値段で
サンダービートは9万円くらい。
ソニックビートが3万円くらい。
ソノサージは7万円くらいしますが調子が悪くなるまではリユースできるのでかなりお得。

手術点数にある超音波凝固切開器機による点数は3,000点ですのでソニックビートはちょんちょん。サンダービートを使うとでっぱちゃうわけです。

当院のような赤字病院にはなかなか厳しいところです。

参照記事(外部サイト):サンダービートとソノサージの違い 値段は高いが超優秀な高エネルギーデバイス

ソノサージの他に似たような医療機器はあるか?

そのような背景で、動物病院での血管シーリング機器の導入率は年々増加しています。最近、開業された先生も同様な理由で開業当初の設備への資金繰りが難しい時期から導入したそうです。

当院でもジョンソンエンドジョンソンのサージレックス・エンシールやコビディエン社のリガシュアを使用してみましたがデバイスをオートクレーブ滅菌可能なソノサージに落ち着いています。

サージレックス・エンシールリガシュアの場合7mmまでの血管がシール可能とのことですが、7mmといったら動物の場合相当太い血管ですから、私だったら縫合も併用すると思います。
そのような使い方もありです。

サージレックス・エンシール

非常にシールと切断に優れていると思いますが、凝固を長く行いすぎるとデバイス先に組織がこびりつき剥がすときに破損しやすく、デバイスの価格も8万円前後と非常に高価でしたので、現在は使用しておりません。
以前小林メディカルで製造していたときはフロントパネルが青だったのですが、今はジョンソン&ジョンソンに販売元が代わってフロントパネルもシルバーになっています。

旧製品新製品
サージレックス 動物病院の設備サージレックス シーリング装置

この頃からか、あるいは記憶違いなのかもしれませんが凝固完了を教えてくれる機能(音が鳴る)が無くなって、自分で判断しなければならなくなったようです。それでも15カウントすると自動で止まります。
このせいなのか、どうしても心配性なので最後のカウントまでシールし続けてしまい組織がこびりついてしまうのだと思います。別の先生がこの設備を使っている動画では、3カウントくらいで凝固を終えている(あるいは自動停止している)映像になっていました。

Ligasure

血管シール力が強力ですが、鉗子式のデバイスだと、シール後の切断は自分で行わないといけないので、何度か誤ってシール部以外を切って出血させてしまったことがあります。これは熟練度でどうにでもなるとは思いますが・・・。
リガシュア 動物病院での設備

 現在、画像の装置は中古でしか手に入らなくなっています。希少価値からか時々ヤフーオークションで50~60万円程度で取引されていますが、私がメーカー整備品をディーラーさんから購入したときは150万円でした。
現行型のForceTriadはリガシュアと高性能電機メス装置が一体化した製品になっています。400万円以上の高価な装置になってしまいました。

残念なことに動物の手術で重宝されていた小さいデバイス鉗子(LS1200)が製造を終えてしまったようなので魅力が半減してしまったかもしれません。あるいは、ある程度在庫を確保しておく必要がありそうです。

この手の機械を3種ほど使ってみての感想ですが、どの装置も犬の太い子宮体の処理は難しいです。シールしたつもりでもパカッと内腔が開いてしまうので、出血はしないですが、よろしくないです。発情を経験した犬の場合は5キロ程度の犬でも開いてしまうかもしれません。

最終的に、当院では犬でも猫でも卵巣摘出をメインにすることになりました。文献によると卵巣摘出でも卵巣子宮全摘出でも病気の発生や予後は変わらないとされていることを飼い主様にインフォームドコンセントし、もし全摘の場合は、子宮の部分だけは糸を使うことをご了承いただき、モノフィラメントの吸収糸を使うようにしています。

使用した経験は無いのですが、他にも

半導体レーザーのバイポーラ型鉗子

半導体レーザー 動物病院

GYRUS Medical社製PK(PlasmaKinetic)システム 

PKシステム

同じ超音波メスのハーモニックスカルぺル

ハーモニックスカルペル 動物病院

エルベ電気メスのバイクランプ

バイクランプ VIO300D

などがあります。

同様の原理である超音波メスのハーモニックスカルペルですが、当院の獣医師が以前勤めていた動物病院で使用していました。現在、ソノサージを使用していますが、使用感はほぼ同じとのことです。はじめは違う機器だというのに気づいていなかったようです。

動物病院業界の医療機器としては今一番熱い分野ではないかと勝手に想像しています。

追伸:新しいシーリング装置について記事にしました。詳しくはシーリング装置のTessで。 

使用頻度  非常に高い

お気に入り度 非常に高い

追記:ソノサージ販売終了 (2018年1月22日)

昨年11月にメーカーからお知らせのFAXが届きました。原文のまま転載いたします。本体の販売は無いようですが、修理部品の在庫は数年あるようです。ソノサージイリゲーションユニットとは送水ユニットのことだそうです。

お客様各位

 ソノサージジェネレーター・イリゲーションユニット販売終了のご案内

「sonoSurg-G2」/「SonoSurg-IU」

拝啓

 貴院におかれましては益々のご清栄のこととお慶び申し上げます。また、平素はひとかたならぬご愛顧を賜り、厚く御礼申し上げます。

 この度、「SonoSurg-G2」と「SonoSurg-IU」につきまして、当社在庫限りにて販売終了とさせていただきますのでご案内申し上げます。

 大変ご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご理解のほどお願い申し上げます。

 尚、両製品とも当面シザーズ・ハンドピースの販売は継続いたします。

敬具

<品目コード等>

 品目コード型番品名
N1401613SonoSurg-G2ソノサージジェネレーター
N1022500SonoSurg-IUソノサージイリゲーションユニット

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