猫の肝リピドーシス(脂肪肝)とは【獣医師監修】

2019年01月11日

あなたの猫ちゃん太りすぎではありませんか?

「デブ猫のほうが可愛いのよ!」って声が聞こえてきそうですが、実は肥満猫がなりやすい命にかかわる病気があります。
『肝リピドーシス』という専門用語より『脂肪肝』といった方がわかりやすいかもしれませんが、人のように暴飲暴食がたたって徐々に具合が悪くなるわけではなく、肥満猫ではたった3日間絶食状態が続いただけでも発症の危険性があります。

肝リピドーシスはなぜなるの?ヒトの脂肪肝との違い。

何らかの病気やストレスで食欲が落ちた場合、肥満猫は、細胞のエネルギー源となる糖分を食べ物から吸収できないため、体内脂肪を溶かして糖分を確保しようとします。その結果、短時間のうちにあまりにもたくさんの脂肪分が肝臓に集まるために肝臓が処理しきれず、たくさんの中性脂肪が肝細胞に蓄積されてしまいます。

肝臓の状態は人間の脂肪肝によく似ていますが、人間の脂肪肝が食べ過ぎや運動不足のために余った糖質や脂質が中性脂肪に変わり、肝臓に過剰にたまった状態であるのに対して、猫ちゃんの肝リピドーシスは飢餓状態が引き起こす異常事態です。画像の白い部分は細胞に脂肪が含まれているためにできた空胞です。

飼い主さんが気づくまで時間がかかることが多いのですが、数日間から1ヶ月近く食欲が落ち、一日中眠そうな顔をして、だるそうにしていたりするのがこの病気の兆候です。体重もだんだん減少していきます。
病状が進行すると黄疸(おうだん)が出て口の粘膜や肌が黄色くなったり、時々嘔吐をするようになります。
発見が遅れると高い確率で死に至ります。

肝リピドーシスの診断法と治療

確定診断には肝臓に針を刺して肝臓を一部採取する肝生検というものを行います。

治療には基礎的な疾患を治療すると同時に、適切な食餌を必要なカロリーを計算して強制的に給餌することで行われます。自分で食べてくれるようになるまで鼻にカテーテルを通したり、内視鏡手術で直接胃にカテーテルをつなぎます(胃ろう:PEG)。治療には数週間かかることもあります。

肝リピドーシスにさせないために

飼い主さんの愛情によって猫ちゃんの肥満や糖尿病が増えていることは皮肉なことですが、猫ちゃんは自分で健康管理ができませんので原因は明らかです。可愛いから、欲しがるからといって、与えていたのでは病気にさせてしまうようなものです。
どうせ愛情を注ぐのであれば常日頃から猫ちゃんの様子を観察し、何か異常があればすぐ気づいてあげる方が猫ちゃんにとって理想的ではないでしょうか。

また、肥満猫は短期間の絶食でも肝リピドーシスを起こしやすいため、食欲不振に気が付いたらできるだけ元気なうちに動物病院に行くようにしてください。一度発症させてしまうと、食欲不振の日数×(かける)5倍以上の治療期間が必要になりますよ。

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