猫のリンパ腫・白血病について【獣医師監修】

2019年01月11日

猫ちゃんの飼い主様なら、『猫リンパ腫・白血病』という言葉を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?
リンパ腫とは、リンパ系の組織から発生する血液のガンの総称です。室内飼いが多い地域では以前のように猫白血病ウイルス(Felv)によるリンパ腫・白血病は減少しました。ウイルス自体の感染率も減少しています。
そのかわりに中~高齢にウイルスが関与していない消化器型リンパ腫が増加しています。私の愛猫も9才の時にこの病気で命を落としました。
500頭に1頭の割合で発生するというこの病気はどのような病気なのでしょう。

リンパ腫の原因

 猫リンパ腫・白血病とは、リンパ系の細胞が腫瘍化することによって引き起こされる悪性腫瘍で、放置すると一、二ヶ月で死亡することが多い病気です。
猫白血病ウイルス(FeLV)の感染によって引き起こされる他、近年ではウイルスが陰性でも発生する消化器型リンパ腫が増えています。

リンパ腫で見られる主要な症状

 症状はまちまちで、元気・食欲の低下、体重の減少、貧血などの他に、胸水による呼吸困難を主とする縦隔型や、お腹のリンパ節や腸管が晴れてが腫れて嘔吐や下痢などの消化器症状を起こす消化器型など多様な症状が見られます。最近ではウイルスが関係しないシニア猫ちゃんの消化器型リンパ腫が増えています。画像は縦隔型リンパ腫で見られた胸水のレントゲン画像です。

検査・白血病予防ワクチン

 白血病ウイルスは少量の血液から簡単に検査を行うことができます。ただし、ウイルスが関与していないリンパ腫も多いため、リンパ節や異常部位に針を刺して細胞を検査する細胞診も多用しています。
また、感染を予防する白血病予防ワクチンがあります。

 海外では5000頭~10000頭に1頭の割合で、ワクチン注射部位に腫瘍ができてしまうことが報告されており、まだまだ完全なワクチンとはいえないのが現状です。
しかし、500頭に1頭という高い発生率、発症後の完全な治療法が無いこと、野外に出てウイルスに接触する機会がある場合には、必要な環境の猫ちゃんにはぜひお勧めしたいワクチンです。当院ではワクチンによる肉腫が万が一発生した場合でも治療することができるように猫ちゃんの背中ではなく、後ろ足に注射を打つように注意しています。

リンパ腫に有効な治療法とは

 リンパ腫の症状が出てしまった場合、現在のところ完全な治療法はありません。様々な化学療法(抗がん剤等)を組み合わせたり、一般状態を改善するための対症療法(栄養・水分の点滴、解熱、輸血など症状にあわせた治療)などが行われます。
固形癌(臓器や組織などで塊をつくる癌)とは違い、すでに体中に広がっているリンパ腫のがん細胞に対抗するには化学療法しかないため、通常外科手術が行われることはありません。初期に鼻腔内に発生したリンパ腫に対して放射線を当てる治療法もあります。

比較的化学療法に反応して症状の改善が見られることが多い腫瘍ですので、飼い主さんの協力を得られれば元気な姿を取り戻せる可能性があります。抗がん剤は動物専用のものがほとんど製品化されていないため、全て人間の抗がん剤を使用します。

2種類の経口による抗がん剤(ステロイド剤など)による在宅治療の他、人間のリンパ腫治療と同様に血管から注射する多剤併用療法などがあります。

残念なことですが、抗がん剤治療で完治したように見えても多くは再発し、1年後の生存率は20%未満といわれています。しかし、中には寿命をまっとうできる猫ちゃんもいますので、希望を捨てないでできる限りの治療を受けさせてあげたいものです。

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