トキソプラズマ症~猫とわたし【獣医師監修】

妊娠中の女性と猫との関係について時々相談をうけます。正しい知識を持たないと妊娠中は猫に絶対に近づかない、猫を処分しなければいけないといった間違った知識のもとで不幸な悲劇を起こしかねないので大切なテーマです。

トキソプラズマとは原虫と呼ばれる微生物で、ウンチに排泄されるのは猫科動物のみですが、人を含む200種類以上の脊椎動物や土の中にも広く存在しています。

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猫ちゃんと暮らしていく上で、妊婦さんに関係する先天性トキソプラズマ症という病気があります。妊娠の数ヶ月前あるいは妊娠中に初めてトキソプラズマに母親が感染する結果、流産や胎児への障害を起こす可能性があります。

ここで『猫=悪者か?』ということになります。
現在、猫ちゃんからの感染は稀なものだということがわかっています。多くの方は全く知らないか、猫=悪者、さらに悪いことに中には獣医師や人間のお医者様でもこのように指導されている方もいらっしゃると聞きます。
英医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナルによるとトキソプラズマ症の感染源の30~60%が生肉や調理の不十分な肉とのことです。ついで土が感染源とされガーデニングなどから感染したとされるもので、10%~15%くらいとなっています。

猫からの感染を成立させるには(a)トキソプラズマに初めて感染して1-3週間以内の猫の糞(b)数日間そのまま放置して、それを(c)トキソプラズマ抗体陰性の妊婦さん(d)手を洗わないで食事をするという非常に確率の低い状況が必要となります。

解説

  1. トキソプラズマ陽性猫は20-30%いるといわれているが、オーシストと呼ばれる感染源を排出しているものは猫全体で1%以下、初回感染後の1-3週間だけ排泄される。猫がトキソプラズマ陽性であるかどうかは、動物病院での血液検査で行うことが出来る。また、活動期には糞便検査でオーシストを検出できる。
    猫自身が感染するルートは、生肉を食べたり、感染したネズミ、鳥、ハエ、ゴキブリなどを食べたり、汚染された土の上を歩いたりすることによって起こる。
  2. 糞便中に排泄されても1-5日間しないと感染力を持たない。
  3. 日本人成人の20%前後がすでに過去に感染し抗体陽性である。抗体陽性の場合、感染の心配はないが、陰性の場合にはやはり注意が必要。
  4. 石鹸で手を良く洗うことによって洗い流すことができる。

最後に妊婦さんがトキソプラズマ感染を防ぐための理想的な予防策をご説明します。

猫ちゃんからの感染予防

  1. 妊娠の可能性のある方は、医師に相談してトキソプラズマの抗体検査を受ける。IgG抗体検査とIgM抗体検査があり、前者で抗体の有無を検査できる。さらに、後者で最近の(通常3ヶ月以内の)感染かどうか判断を下す。
  2. 猫ちゃんの抗体検査を動物病院で実施して抗体の有無を確認する。
    1. 抗体の数値が低く安定している場合はほとんど心配にならない。
    2. 2回測定して、上昇が見られた場合、女性の方が抗体陰性であれば細心の注意が必要。しばらく動物病院に入院して毎日糞便検査を実施する(通常2-3週間以内)。退院後トキソプラズマに対する内服薬を与える。
    3. 陰性の場合は、新たな感染を起こさないよう、感染の危険性のある野外に出さない。生肉を与えない。予防的に出産までの間予防薬を飲ませる手段もある。
  3. ネコトイレの掃除は、妊娠中でない人にしてもらう。それができないときは、手袋をしてトイレの掃除をする。毎日掃除することが重要。掃除の後は、石鹸で手をよく洗う。

もっと大切なこと

  1. 一番の感染源である、生肉に注意する。市販の精肉はほぼ安全だそうだが生に近い肉やレバーの刺し身などは避けて、よく火が通った肉を食べること。
    生肉を調理した包丁やまな板は十分洗浄して、そのまま他の野菜などを調理したりしないこと。
    調理中に半生の状態で味見をしないこと。
  2. 庭いじりをするときは必ず手袋を着用すること。そのあと良く手を洗うこと。

 いろいろと複雑ではありますが、正しい知識を持った医師や獣医師に相談して、また飼い主さん側も不用意に不安がることなく猫ちゃんとの生活を維持してあげてください。愛する猫ちゃんが悪者にされてしまうなんて悲しいことですので。

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