犬の膵炎の症状・治療【獣医師監修】

2019年01月11日

「すい炎」って何? 症状は?

 すい炎(膵炎)とは、胃の裏側にある膵臓という臓器に炎症が起き、膵臓から分泌される消化液が膵臓の外側に漏れ出すことで、膵臓自身やまわりの脂肪、組織が溶かされてしまう怖い病気です。症状の重い急性膵炎での死亡率は人間の場合でも2.9~8.9%とも言われています。
膵炎の症状はワンちゃん達に多い胃腸炎の症状の他に発熱や強い腹痛、黄疸などが見られます。初期の頃には胃腸炎の症状(嘔吐や下痢)との鑑別が付きにくいため、激しい嘔吐やお腹を痛がって祈りのポーズ(前肢をのばして、腰を上げる姿勢を続ける)が見られたら注意が必要です。

犬の膵炎の原因は?

動物の膵炎の原因ははっきりとわかっていません。人間の場合は過度の飲酒が最大の原因といわれていますが、お酒を飲まないワンちゃんの場合は、高脂肪な食事、肥満、ホルモンの病気、感染症などの関連性が疑われています。

犬の膵炎の診断法

膵炎は急性胃腸炎との区別がしにくい症状が出るため、症状に加えて複数の検査を組み合わせて総合的に判断することが一般的です。膵臓に炎症が起こっているかをみるために、血液検査や画像検査(レントゲンや超音波検査)を行います。血液検査では、信頼性の高いv-LIPA(リパーゼ)やCRP(炎症性蛋白)が院内で測定できるため、迅速診断に貢献しています。

膵炎の治療にはどのようなものがあるの?

膵炎と診断されれば、人間の場合と同様多くの場合は入院治療となります。これは、強い炎症による痛みや嘔吐に対して、適切にモニタリングしながら薬や輸液による治療を集中的に行う必要があるからです。
また、膵臓を休ませるために短期間の絶食をすることも一般的です。軽い膵炎の場合は、通院治療が可能な場合もあります。

2018年に動物用の膵炎治療薬として「ブレンダZ」という製剤が使えるようになり、多くの獣医師の関心を集めています。

膵炎の予防法

基本的には、膵炎の原因と考えられている脂肪の制限を行います。肥満の場合はダイエットも必要です。当院で行っている春の健康診断(フィラリアぷらすワン)で、中性脂肪の数値やLIPA(リパーゼ)の数値が高めな場合は要注意です。その様なワンちゃんには脂肪の割合が5%のロイヤルカナン消化器サポート(低脂肪)やヒルズのi/d(Low Fat)などの低脂肪な療法食をお勧めしています。

死亡率も決して低くない病気ですので、肥満やオヤツの与え過ぎなどに注意しましょう。定期血液検診で引っかかった場合にも注意してあげてください。

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