うさぎの膿瘍(のうよう)の治療【獣医師監修】

2019年01月10日

うさぎさんのアゴの付近がだんだん腫れてきたら要注意です。ウサギに非常に多い膿瘍(のうよう)の可能性があります。
膿瘍とは細菌感染により発生した膿を蓄えた空洞のことを言います。

うさぎの膿瘍が治りにくい理由

通常、うさぎさん以外の動物では膿瘍を切開して膿を洗い流し、抗生物質を投薬すれば間もなく完治させることが可能です。
しかし、うさぎさんの膿瘍ではこの方法ではまず完治は望めません。恐らく次に動物病院を受診する時にはもっと悪化した状態で再診することになるでしょう。非常に厄介な病気です。

なぜ、うさぎさんだけこのように治りにくいのでしょうか?まず、うさぎの膿が非常に濃く固いこと(クリームチーズや練りハミガキ状)、膿瘍の袋が非常に丈夫なこと、ウサギさんが細菌感染に弱いことがあげられます。また、ウサギさんに安全に使える抗生物質の種類がかなり限定されてしまうのも治療を難しくしている要因です。

下の画像は摘出した膿瘍とその中にたまっているクリームチーズ様の膿です。

特に、顎にできた膿瘍は歯根からの感染が原因のことが多く、口の中から顎の骨を通して皮膚の下までトンネルがあるため、ウサギ専門病院の獣医師達が「9割は治らない深刻な病気です」と伝えるほど治療が困難な病気です。

膿瘍の治療はどのような方法があるか

姑息的に皮膚を切開して排膿、消毒を行うだけでは完治どころか痛い思いをさせた上に悪化させることにもなります。
治療の原則は、原因となっている臼歯の抜歯、徹底的な洗浄消毒、完全な膿瘍組織の摘出です。しかし、麻酔下でこのような処置を3回4回と繰り返しても治らないケースも見られます。高齢の為、麻酔をかけての大きな手術が行えない場合もあります。
当院も所属しているエキゾチックペット研究会の先生方も様々に試行錯誤しながらどうにかこの難病を治そうと努力しています。

当院では、ウサギさんの年齢や膿瘍の重症度、飼主さんの治療への理解を総合的に判断した上で、治療方法を検討しています。

抗生物質の選択も、闇雲に選ぶのではなく、採取した膿を培養してどの薬剤が効果が高いか調べる薬剤感受性試験も実施しています。膿瘍を摘出した傷を閉じずに開放したままにして、徹底的に消毒を行う方法が最近の治療では一番効果が出ております。

一日でも早く快適な生活をおくれる様、スタッフ一同ご協力したいと思いますのでお気軽にご相談下さい。

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