うさぎの消化管うっ滞(毛球症)【獣医師監修】

2019年01月11日

当院に来院される食欲不振のウサギさんを原因別にざっと分類してみると、7割ほどが原因のはっきりしない「消化管うっ滞」に分類されています。他には不正咬合や肝臓病、腎臓病、腫瘍などがあります。

ウサギの消化管うっ滞とは

以前は、毛球症(もうきゅうしょう)と呼ばれていましたが、全身毛に覆われたきれい好きのウサギさんは、常時胃の中にある程度の毛が貯まっています。ストレスや皮膚病で余程短期間に多量の毛を摂取しない限り毛だけが原因でうっ滞を起こすことは少ないようです。
自然界のウサギさんは栄養価の少ないしかし繊維の多い食物を常に食べることによって胃腸を動かして健康を維持しています。
人間と暮らしていく環境で、様々なストレスや運動不足、繊維の少ない食事などの悪条件が重なると、ウサギさんの消化管(胃や腸)の動きが低下してしまいます。

消化管うっ滞の症状は?

はじめは食欲不振として現れることがほとんどですが、実は同時に排便の低下~消失が起きており、注意深い飼い主の場合食欲があるのに便が出ていないという異変に気付ける場合があります。気付くのが遅ければ徐々に衰弱し、手当てが遅れれば死亡することもあります。
診断は、症状や経過の問診、胃の触診やレントゲン検査、他の病気の除外のための血液生化学検査などによって行われます。

 

消化管うっ滞の治療法

まず内科療法から行います。脱水などの全身状態の悪化を改善するための皮下補液、胃腸の運動を促進する薬剤、食欲刺激剤、そして胃腸運動を刺激するためにウサギ専用の高繊維流動食の強制給餌など積極的な治療を行います。

胃の内容物により治療法が異なります。例えば胃の中に胃液とガスが充満している急性胃拡張という危険な状態では胃の蠕動を促したり強制給餌をすることは危険なので、鎮痛剤を使ったりする必要があります。お腹のマッサージは禁忌です。

通常のうっ滞では胃の中は流れなくなっているペレットや牧草なので液状の青汁を与えたり、内容物の量が少ない場合はペレットで作った流動食をシリンジで与えます。

軽症なものは3~5日程度の内科療法で改善が見られますが、中には完全な閉塞によって、外科手術が必要になるケースもあります。
しかし、草食動物は手術や入院等のストレスに弱く、手術後の回復に非常に時間がかかる場合が多いため、どうしても内科的に治療できないと判断した場合だけ行うようにしています。実際、毎日のように食欲不振のウサギさんが来院していますが、開腹手術を行うのは年に1例ほどです。

消化管うっ滞や毛球症の予防方法

歯科疾患とともに非常に多い病気ですので、日頃からの予防が最重要です。牧草などの食物繊維が多い食事をたっぷり与え、適度な運動とまめなブラッシングを行うことが良い予防になります。

パイナップルやパパイヤなどにも蛋白分解酵素が含まれているため、ウサギ用オヤツとしてペットショップにもいろいろなサプリメントを見かけるようになりました。
実際には、それらのものが本当に効果があるのかどうかは、はっきりとした研究結果は無いようです。

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