ウサギの全身麻酔って怖い?うさぎの手術の死亡率など

 ウサギの全身麻酔は他の動物に比較して危険性が高いことが確認されています。2008年の英国で行われた調査ではウサギさんの術後1週間以内の死亡率は0.73%(約137件に1件の割合)と報告されています(同調査で犬は0.05%)。

ウサギの全身麻酔はなぜリスクが高いのか?

 原因と思われることは何点もあります。例えば、
   ・ウサギ専用の麻酔薬が無い・・・犬猫用や人体用の麻酔薬を流用しなければならない
   ・体が小さく、麻酔中に体温が低下しやすい(麻酔覚醒後も体温が安定しない)。
   ・麻酔の深度(効き具合)が確認しにくい・・・結果他の動物より深い麻酔になりやすい。
   ・ストレスに弱い・・・恐怖や痛みのストレスによるアドレナリンショックによる突然死。
   ・気道が確保しづらい。

 などが考えられますが、最後の「気道の確保」に関しては最近ではかなり改善させることができるようになってきました。

ウサギ用ラリンジアルマスク V-GEL

V-GEL ウサギ用麻酔

 像の器具はv-gelというウサギの全身麻酔時に気道を確保する専用器具です。同様の器具で人間用のものは1本2,000円程度で購入できますが、この器具は1本28,000円とかなり高価な医療器具です。
 通常犬猫では人間と同様の気管チューブという気道に挿入する管を全身麻酔で使用します。

 短時間の処置を行う場合には麻酔用マスクで麻酔ガスをかがせるマスク麻酔を行うこともありますが、気管に直接送管できる気管チューブの方が呼吸のコントロールが行いやすく安全性が高まります。

動物病院での麻酔

 ウサギの場合はどうかというと、体が非常に小さいことと口を大きく開口させることが難しいため、気管チューブを挿管するには特殊な装置を使わない限りは非常に困難です。ですので、一般的には麻酔マスクでの麻酔管理が中心となっていました。

ウサギ用のv-gelはイギリスの麻酔科医によって1983年に開発されたラリンジアルマスクという製品を動物用に改良した医療器具です。

ラリンジアルマスクとはチューブ先端に換気マスクのような形状のカフが付いており、口から挿入する。カフが喉頭を覆い隠すように接着し、換気路を確保する。換気の確実性や患者への侵襲といった点で、フェイスマスクと気管内チューブの中間の特性を持つ。

気管挿管による気道確保と比較して、操作が簡単で、喉頭鏡により喉頭を展開することなく使用できることや、気道への刺激が少なく、チューブを入れることによる血圧の変化が抑えられること等の利点があり、気道確保が困難な場合や短時間の手術に利用される。

ウサギの麻酔 死亡率 危険

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 まだ国内では2015年1月にアコマ医科工業から発売されたばかりで全国的に普及しているとは言えませんが、当院では以前より海外から取り寄せて使用していました。この医療器具により気道の確保が格段に行いやすくなったため、当院でのうさぎの全身麻酔での安全性はかなり高くなっていると考えられます。 

あおぞら動物病院での安全性向上の取り組み

 単純にウサギの全身麻酔が安全か?と問われれば、ウサギさんの診療が不得意の先生は過剰にリスクを強調するかもしれませんし、逆に自院では事故が起きたことが無いと断言する先生がいればそれは運が良かっただけか麻酔の件数が少ないのかもしれません。

当院はエキゾチック動物専門の動物病院ではありませんが、ウサギさんの受診率が船橋市の動物病院では最も多く、今回ご紹介したV-GEL以外にも、ベアハガーなどの体温調整のための装置、なにより豊富な手術・麻酔経験を持っております。
 
 不幸なことに麻酔リスクと治療しないリスクを天秤にかけなければならないシーンが日常的に発生しています。説明不足でトラブルも起こりやすいデリケートな問題なので、船橋市のあおぞら動物病院でもインフォームドコンセントの機会を増やすとともに、納得いくまで相談していただけたらと思います。