犬猫の薬と人間用の薬は何が違うの?(動物病院の薬)

人間の薬 動物の薬 違い 

 今回のテーマは「犬に使える人間の薬」はあるのかというものです。

 意外と思われるかもしれませんが、実は「動物病院で使われるお薬のほとんどが人間用のお薬です。動物専用医薬品は恐らく2割もないと思います。代表的な動物専用医薬品はフィラリア予防薬やノミダニ予防・駆除薬、ワクチンなどでしょうか。最近ではペットの高齢化により心臓のお薬などはほとんど動物用を選べるようになってきました。

なぜ動物病院で人間用のお薬を使っているの?

もちろん、ペットの治療に動物用医薬品を使うのがベストではあります。しかし、同じ動物ですからペットもヒトも、治療に必要なお薬が同じ成分であることが少なくありません。

同じ成分ですので、製薬会社がわざわざ動物薬の認可を取るために莫大なコストをかけてヒト用・ペット用に分けて開発、製品化するメリットがないのです。

もし、動物用専用の薬しか使ってはいけないことになると、人間と同じ病気もたくさん発生していますから、8割くらいの病気が治療したくても薬がないという理由で治療できなくなってしまうかもしれません。

また、動物薬には犬猫用のものしかありませんので、残念ながらウサギとフェレット用のお薬は国内では製造されていません。

動物用の薬

人間の血圧のお薬である「チバセン」という名前のお薬の成分はベナゼプリルですが、動物用は「フォルテコール」という製品名で発売されています。また、白内障の人体薬で「カタリン点眼」というものがありますが犬用は同成分で「ライトクリーン」という名前で発売されています。

同じ成分でも動物用として発売するためには動物用のお薬の認可を改めて取る必要があります。多大なコストと時間がかかるため、特にペット用として需要があるもから製造発売される傾向があります。そして、同じ成分ならジェネリック医薬品を含め圧倒的に人体薬の方が安く流通しています。

動物用のものがあれば動物用のものを優先して使うのが望ましいですが、同時にコストが上がることによって同じお薬の成分でも飼い主さんの負担が大きくなる場合があります。そのような場合、治療コストを考えて動物用を使うか、人間のジェネリック医薬品を使用するか飼い主様に決めていただくこともあります(最近では動物用薬でもジェネリック医薬品が発売されるようになってきました)。

それならば人間用の風邪薬を飲ませてもいいの?

いくら人間と同じ薬だからと言って、勝手にご自身のお薬を飲ませたりは絶対にしないでください。私たちは、動物用のお薬の量を計算して処方しています。安易に、人間の体重の何分の一だからと計算したものを与えてしまうと、全く効かないか重大な中毒を起こす危険性もあります。特に猫は人間や犬と比べて薬物に対しての代謝能力が低いので注意が必要です。

当院では、人間の薬局を見習ってお薬の副作用等も記載した薬情(薬剤情報提供書)をお薬の処方時にお渡ししております。もしお気づきの点がございましたら遠慮なくご相談ください。