犬の『逆くしゃみ症候群』とは? |原因・治療法は?

 

 くしゃみ症候群という言葉を聞いたことがありますか?今回は、小型犬、特にチワワなどの短頭種に多い疾患です。まずは動画を再生してみてください。(注意)音が出ます。

逆くしゃみってどんな症状なの?

 言葉で表現するのは難しいですが、前触れもなくワンちゃんが鼻から急激に息を吸い込む動作をするので、鼻を豚のようにフゲーフゲーあるいはブーブーと鳴らしているように見えます。通常何もしなくても1分程度で終わることがほとんどです。かなり苦しそうに見えますが、本人にとっては特に苦しくは無いようです。中には数日おきと頻繁に発生しているワンちゃんもいるようです。

 チワワの飼い主様にお話を聞いてみると、かなりの頻度でこの逆くしゃみという症状がみられているようです。推定ですが、10頭に1~2頭程度は見られるのではないでしょうか。他にもパグやトイ・プードル、ミニチュア・ダックスフンド、動画のようにキャバリアなどでも見られます。

 英語ではreverse sneeze syndrome(リバース・スニーズ・シンドローム)とかReverse sneezingと呼ばれています。『逆くしゃみ』とはこの言葉を日本語に直訳して出来た名前です。鼻から急激に空気を吸い込む動作を通常のクシャミの逆動作として表現しているのですが、クシャミのようにはあまり見えませんね。鼻水を飛ばしたり、熱が出て元気がなくなるようなこともありません。

逆くしゃみの治療法は?

 残念ながら、原因や治療法については解明されていません。何らかの鼻粘膜への刺激や興奮時に発生することが多いようです。

 ほとんどが生涯にわたって時々この逆くしゃみ発作を起こしますが、この逆くしゃみが原因で死んでしまったり、他の疾患を引き起こすことは無いようです。人間のしゃっくり(横隔膜痙攣)が予防や治療できないのと同じですね。

 ちなみに、人間のしゃっくりの止め方ですが、ビックリさせたり、水を逆さに飲むなどの驚くほど効果が無い定番の方法がありますが、ティッシュで紙縒りを作ってクシャミをするとほぼ間違いなく止まります。人前では恥ずかしいですが…。

 応急処置として、ワンちゃんがリラックスできるように胸をさすってあげたり、鼻先に息を吹きかけると治まることもあるようですが、数分で自然に止まってそのあとは何事もなかったようにケロッとしているので見慣れてしまった飼主様も多いのではないでしょうか。

 人間の風邪薬にも含まれる眠くなる成分の抗ヒスタミン薬に反応するという報告もあるようなのですが、幸いにも薬が必要なほどひどい逆くしゃみには遭遇したことがありません。もしそのようにひどい逆くしゃみがあったら何らかの病気の可能性も考えなくてはならないかもしれません。通常、幼少期から発生がみられ、中・高齢になってから突然逆くしゃみがはじまることはありませんので、その場合何か病気の兆候の可能性もあります。

 うちの子ちょっと動画と違うみたいだけど・・・

 動画と似ているけど少しうちの子とは違うみたいという方は、googleの動画検索にて『逆くしゃみ』あるいは『Reverse sneezing』と検索すると、youtubeでたくさん動画が見つかると思います。船橋市のあおぞら動物病院の診察室でもパピヨンとプードル、ミニチュア・ダックスの逆くしゃみ動画がご覧になれますのでお声をかけてください。なかなか診療中にタイミングよく出る症状じゃないため、映像でご覧になっていただくのが一番だと思います。

 その他に、実際の病気として心臓病や肺の病気による咳(喉に引っかかったものを吐き出すようなケッ、ケッという仕草)や気管の病気(気管虚脱など)によるガチョウがガーガーと鳴くような呼吸音、鼻炎による本物のクシャミもありますので、動画と違う動作だけどなんだかわからないというような場合は、デジカメや携帯のカメラ等で動画を撮影した映像を動物病院に持ってきてもらえると非常に診断の助けになります。診察室で一生懸命モノマネして症状を伝えようと頑張っているオーナー様には申し訳ないのですが、誤診するわけにはいきませんので。

 

船橋市のあおぞら動物病院