犬の椎間板ヘルニアの治療について【獣医師監修】

2019年01月11日

犬の椎間板ヘルニアとは?

 ダックスフントの飼い主さんならご存知かもしれません。最近人気のトイ・プードル、フレンチ・ブルドッグ、ウェルシュ・コーギー、ビーグルなどでも若年から発症が見られます。
椎間板とは、背骨と背骨の間にあるクッションの役目をしている軟骨です。椎間板ヘルニアとはこの椎間板が本来の位置から突き出した状態を言います。突き出た椎間板物質は、背骨の中を走る脊髄という太い神経を圧迫して、様々な症状を起こします。

人間と犬の椎間板ヘルニアの違い

人間でも同じ椎間板ヘルニアで悩まれている方もいらっしゃると思いますが、直立姿勢の人間とは違いワンちゃんでは飛び出した椎間板が背側の脊髄を重度に圧迫する為、より麻痺などの重度の症状が出やすいといわれています。

椎間板ヘルニアの症状

【典型的な症状】
・抱き上げようとするとキャンキャンと痛がって鳴く。
・動くことを嫌がって背中を丸めてじっとしている。
・後ろ足の麻痺によりうまく歩けない。
・尿や便の失禁。または、全く出ない。

腰の痛みだけの軽度なものから、緊急手術が必要な重度なものまでありますが、適切な治療を怠ると生涯下半身麻痺が残ることもある怖い病気です。重症度により、一般的に1~5度のグレードに分けられます。

1度 背中の痛みのみで、初めての発症。歩行可能。
2度ふらつくが歩行可能。姿勢反応の低下。2回目以降の再発。
3度歩行不可能(前足だけでの歩行)。姿勢反応消失。
4度歩行不可能。深部痛覚あり。意識的な排尿ができない。
5度歩行不可能。深部痛覚なし。

椎間板ヘルニアの治療

椎間板ヘルニアの治療には1~2度の軽症例を対象とした内科療法と3度以上に適応の外科療法があります。どちらの治療にもメリット・デメリットがあります。一般的に、重症になればなるほど外科療法のメリットが高くなります。治療の成功率や回復までの期間、再発率などを考慮して最良の治療法を選択する必要があります。

内科治療

厳密なケージレスト(ケージ内での絶対安静)、レーザー治療、薬物療法(エラスポール、副腎皮質ホルモンなど)。当院では約2週間の入院中に毎日のレーザー治療と一日数回のリハビリを獣医師と動物看護師が連帯して実施しています。

外科治療

全身麻酔下で飛び出した椎間板物質を除去します。同じような症状でも原因になっている椎間板はMRI検査を行わなければ特定できません。当院ではMRI検査可能な検査センターのキャミックと連帯を取って早期の手術が可能となっています。

手術では脊髄を圧迫している飛び出した椎間板物質を除去するため、一般的に行われている効果と安全性の高い片側椎弓切除術を実施しています。

椎間板ヘルニアはワンちゃんの一生にかかわる深刻な病気です。この病気が疑われたら、少しでも早くご相談ください。最後に脅かしてしまって申し訳ありませんが、「明日でいいや」が一生の後悔になる病気です。

背骨の模式図

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