FIPに対する最新の治療法について~不治の病に希望の光が

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の飼い主様に朗報です。

世間では連日、新型肺炎の暗い話題ばかりですが、コロナウイルスは人間だけに感染するウイルスではなく、FIPを発症させる猫コロナウイルスも存在しています。

今回のコラムは長年、不治の病として治療法がなかった猫伝染性腹膜炎FIP:Feline infectious peritonitis)の新しい治療法がテーマです。今話題のMUTIAN(ムティアン)についても解説しています。

FIP(猫伝染性腹膜炎)ってどんな病気?

猫伝染性腹膜炎(FIP)とは

FIPの腹水

FIPは猫に持続的に感染している猫腸コロナウイルスが突然変異を起こして、強毒性のFIPウイルスになるという説が有力です。

お腹や胸に液体が貯まる(腹水や胸水)ウェットタイプやリンパ節・腎臓・脳・眼などに肉芽腫(にくげしゅ:慢性的な炎症に基づいて生じる腫瘤)を作るドライタイプなど多彩な症状を示し、ついには死に至る病気です。

1歳未満の若齢猫や8歳からのシニア猫に発生することが多く、ドライタイプに比べウェットタイプは非常に進行が早いため発見から10日ほどで急死してしまうケースもみられます。

FIPの症状

ウェットタイプ・・・腹水・胸水の貯留、持続性の発熱、食欲不振、貧血、黄疸
ドライタイプ・・・持続性の発熱(39~40℃以上)、貧血、内臓の肉芽腫性炎による多彩な症状(慢性的な下痢などの消化器症状、眼のブドウ膜炎、てんかん発作、腎不全、肝不全)
混合タイプ・・・腹水・胸水などあり一見ウェットタイプの様だが、腹部臓器に肉芽腫が見られウェットとドライのどちらの特徴もある病態。

FIPの診断法は?

以前は血液によるコロナウイルスの抗体検査を中心に行われていましたが、病原性の弱い腸コロナウイルスでも引っかかってしまうため精度が低く、誤診も多くありました。

最近ではヒトの新型肺炎でご存知のPCR検査(遺伝子検査)の精度が高くなったため、α1AGやSAAなどの炎症マーカーや特徴的な臨床症状(腹水・胸水、持続性の発熱、黄疸など)を合わせることで以前より早期に精度の高いFIP診断が可能になりました。

最新の診断方法は動物用検査会社のマルピーライフテックのホームページに掲載されています。こちらのリンクからどうぞ⇒FIP診断フローチャート

FIPに有効な治療法はあるのか?

 従来はステロイド剤やインターフェロンを中心にした症状緩和と進行抑制を期待する治療が主なものでした。効果は獣医師の間でも懐疑的でした。しかし、2019年カルフォルニア大学が論文発表した製剤(GS-441524)が最近のFIP治療で一番ホットな話題となっています。

GS-441524ってどんな薬なのですか?

2019年2月に獣医大学として有名なカルフォルニア大学デービス校のNiels Pedersen(ニールス・ペダーセン)教授の研究チームが、今まで治療法の見つかっていなかったFIPに対しての素晴らしい研究成果を発表しました。そちらがリンク先の論文になります。私も英語が苦手ですが、google翻訳機能でだいぶ意味が分かると思います。

『自然発生した猫伝染性腹膜炎の治療のためのヌクレオシド類似体GS-441524の有効性と安全性』

GS-441524はインフルエンザ治療で有名なタミフルの成分(オセルタミビル)などを開発したギリアド・サイエンシズ社(Gilead Sciences Inc.)が創薬したヌクレオシド類似体(ヌクレオシド系抗ウイルス薬)。人の新型コロナウイルスの治療薬として期待されている「レムデシビルGS-441524のプロドラッグ。

日本の動物病院で治療できるの?

非常に残念なことにGS-441524を使った治療薬は製品化されていないため、製薬会社から購入することができません。また、今後製品化するかどうかもわかりません。

では、私たちは不治の病であり、しかも発症から数日~2か月程度で亡くなってしまうFIPに対して指をくわえて見ていることしかできないのでしょうか。

実は、中国の動物用医薬品会社がMUTIAN Xを有効成分としたMUTIAN(ムティアン)という製品を販売しています。国内ではお薬ではなくサプリメントとしての扱いですが、世界で数千の治験報告があり非常に期待されています。

 MUTIAN (ムティアン)を処方できる動物病院は全国的に増えています。FIPの治療経験の多い協力動物病院は北海道1件・宮城県1件・東京都4件・神奈川県1件・千葉県2件・埼玉県1件・大阪府1件・兵庫県2件・広島県1件・福岡県1件(2021年3月時点)があります。

かかりつけの獣医師が定期検査や治療に協力して下されば、オーナー様自身で販売元から個人輸入して治療することも可能です。

FacebookにMUTIANで治療している飼主ネットワーク「FIP CAT JAPAN」があります。獣医師も参加している助け合いグループです。緊急時はグループに投稿してアドバイスを求めてください。

※FIP治療の勉強会を作っております。獣医師で参加ご希望の方は、リンク先の参加申請から3つの質問に返信してご参加ください。原則治療に賛成の方を承認しておりますのでご了承ください⇒【獣医師限定・非公開】MUTIANについて勉強する会

(注)新型肺炎(COVID-19)の影響で、海外からの物流が非常に悪くなっています。必ず事前に電話予約をお願いいたします。

MUTIAN(ムティアン)の課題

日本国内での扱いは未承認動物用医薬品となります。法令ではこちらの製品を販売・譲渡・広告することは違法行為となり罰則が科せられます。販売とは無診療でのネット販売や、個人間での薬の譲渡が該当します。また、クラウドファンディングやSNSで効能を広告することも違法行為となります。詳しくはこちらに。

千葉県中央家畜保健所に問い合わせたところ、動物病院での治療のための処方問題ないとの回答を頂いております。

また、一般に処方される動物用のお薬と比べて非常に高額な為、MUTIANだけでもトータル60~150万円以上の費用が必要になります。概算で体重1kgにつき一日3,000~6,000円ほどの費用が治療期間分(通常84日間)必要になります。

近い将来に、FIPが不治の病ではなくなりどこの動物病院でも当たり前に治療できるようになる日が来ることを願ってやみません。

MUTIAN Xカプセルの成分

(注)主にサプリメントとして使われている成分が多いため、具体的な効能は不明です。

  • Crocin・・・(和名)クロシン・クロチン。クチナシの果実やサフランに含まれる色素。抗酸化作用(活性酸素を除去し、細胞の老化を防いだりする作用)があるようです。
  • Nictinamide Mononucleotide・・・(和名)ニコチンアミド モノヌクレオチド。NMNとして人間用にサプリメントが販売されています。ネットでの検索ですが、はっきりした効果は見つかりませんでした。
  • Silymarin・・・(和名)シリマリン。マリアアザミ(英名:ミルクシスル)に含まれる成分。動物用では肝臓用サプリメントとして使われることがあります。
  • S-Adenosylmetionine・・・SAMe(サミー)と呼ばれ10年以上前から動物用の肝臓に対する有効性が評価されている製品です。シリマリンとともに肝臓用の動物サプリメントでは主要な成分です。
  • MUTIAN X・・・商品名にもなっているメインの成分(MT0901)。
  • Microcrystalline cellulose・・・微結晶性セルロース?。食品の増量剤として俗にいう「つなぎ」の役割をします。特に効能はありません。