MUTIANによるFIP治療~不治の病に希望の光が

5.0

の飼い主様に朗報です。

世間では連日、新型肺炎の暗い話題ばかりですが、コロナウイルスは人間だけに感染するウイルスではなく、FIPを発症させる猫コロナウイルスも存在しています。

今回のコラムは長年、不治の病として治療法がなかった猫伝染性腹膜炎FIP:Feline infectious peritonitis)の新しい治療法がテーマです。今話題のMUTIAN(ムティアン)についても解説しています。

FIP(猫伝染性腹膜炎)ってどんな病気?

猫伝染性腹膜炎(FIP)とは

FIPの腹水

FIPは猫に持続的に感染している猫腸コロナウイルスが突然変異を起こして、強毒性のFIPウイルスになるという説が有力です。

お腹や胸に水が貯まる(腹水や胸水)ウェットタイプや肝臓・腎臓・脳・眼・腸管などに肉芽腫(にくげしゅ:慢性的な炎症に基づいて生じる腫瘤)を作るドライタイプなど多彩な症状を示し、ついには死に至る病気です。

1歳未満の若齢猫や8歳からのシニア猫に発生することが多く、ドライタイプに比べウェットタイプは非常に進行が早いため発見から10日ほどで急死してしまうケースもみられます。

FIPの症状

ウェットタイプ・・・腹水・胸水の貯留、持続性の発熱、食欲不振、貧血、黄疸
ドライタイプ・・・持続性の発熱(39~40℃以上)、貧血、内臓の肉芽腫性炎による多彩な症状(慢性的な下痢などの消化器症状、眼のブドウ膜炎、てんかん発作、腎不全、肝不全)
混合タイプ・・・腹水・胸水などあり一見ウェットタイプの様だが、腹部臓器に肉芽腫が見られウェットとドライのどちらの特徴もある病態。

FIPの診断法は?

以前は血液によるコロナウイルスの抗体検査を中心に行われていましたが、病原性の弱い腸コロナウイルスでも引っかかってしまうため精度が低く、誤診も多くありました。

最近ではヒトの新型肺炎でご存知のPCR検査(遺伝子検査)の精度が高くなったため、α1AGやSAAなどの炎症マーカーや特徴的な臨床症状(腹水・胸水、持続性の発熱、黄疸など)を合わせることで以前より早期に精度の高いFIP診断が可能になりました。

最新の診断方法は動物用検査会社のマルピーライフテックのホームページに掲載されています。こちらのリンクからどうぞ⇒FIP診断フローチャート

FIPに有効な治療法はあるのか?

 従来はステロイド剤など免疫抑制剤を中心に症状の緩和と進行の抑制を期待することが治療の要でした。しかし、2019年カルフォルニア大学が論文発表した製剤(GS-441524)が最近のFIP治療で一番ホットな話題となっています。

当院では、様々な方面から有効といわれている情報をもとに次のようなお薬で飼主さんのアシストを行っています。

副腎皮質ホルモン(ステロイド)・・・免疫抑制剤・食欲改善。治療薬のスタンダード。
インターフェロン・・・抗ウイルス薬・免疫調整。FIPへの効果に否定的な意見も多い。
シクロスポリン・・・症状を和らげる可能性がありますが、情報量や認知度は低いです。広島の佐々木 雄祐先生の発表があります。
イトラコナゾール・・・もともと皮膚糸状菌(カビ)の治療薬である抗真菌薬にFIPウイルスの増殖を抑制する可能性があることを北里大学の宝達 勉教授らのグループが発表。高容量10㎎/㎏/日で使用。肝障害の副作用が出ることがあります。
カモスタットメシル・・・ヒトの膵炎の治療薬。東大などの研究グループが新型コロナウイルス(COVID-19)に効果があるのではないかというデータを発表しています。
FIP治療 ステロイド インターフェロン MUTIAN ムティアン FIP ムティアン 注射 MUTIANⅡ

GS-441524ってどんな薬なのですか?

2019年2月に獣医大学として有名なカルフォルニア大学デービス校のNiels Pedersen(ニールス・ペダーセン)教授の研究チームが、今まで治療法の見つかっていなかったFIPに対しての素晴らしい研究成果を発表しました。そちらがリンク先の論文になります。私も英語が苦手ですが、google翻訳機能でだいぶ意味が分かると思います。

『自然発生した猫伝染性腹膜炎の治療のためのヌクレオシド類似体GS-441524の有効性と安全性』

GS-441524はインフルエンザ治療で有名なタミフルの成分(オセルタミビル)などを開発したギリアド・サイエンシズ社(Gilead Sciences Inc.)が創薬したヌクレオシド類似体(ヌクレオシド系抗ウイルス薬)。人の新型コロナウイルスの治療薬として期待されている「レムデシビルGS-441524のプロドラッグ。

日本の動物病院で治療できるの?

非常に残念なことにGS-441524を使った治療薬は製品化されていないため、製薬会社から購入することができません。また、今後製品化するかどうかもわかりません。

では、私たちは不治の病であり、しかも発症から数日~2か月程度で亡くなってしまうFIPに対して指をくわえて見ていることしかできないのでしょうか。

実は、MUTIAN(ムティアン)という中国の動物用医薬品会社がMUTIAN Xを有効成分とした製品を販売しています。お薬ではなくサプリメントとしての扱いですが、世界中の数千の治験報告によるとFIPに対してGS-441524と同じような効果があるのではないかと期待されています。

 MUTIAN (ムティアン)を取り扱っている動物病院は、千葉県のあおぞら動物病院の他に東京2件・神奈川1件・大阪1件・広島1件・宮城1件・兵庫1件(2020年9月時点)があります。各動物病院の連絡先は協力動物病院のリストにあります。かかりつけの獣医師が定期検査や治療に協力して下されば、オーナー自身で販売元から個人輸入して治療することも可能です。

(注)新型肺炎(COVID-19)の影響で、海外からの物流が非常に悪くなっています。必ず事前に電話予約をお願いいたします。

MUTIAN(ムティアン)の課題

日本国内では未承認の動物用医薬品という扱いになります。法令ではこちらの製品を販売・譲渡・広告することは違法行為となり、これを獣医師が行えば獣医師免許の剥奪もあるようです。販売とは無診療でのネット販売や、個人間での薬の譲渡が該当します。また、クラウドファンディングやSNSで効能を広告することも違法行為となります。

千葉県中央家畜保健所に問い合わせたところ、動物病院での治療のための処方問題ないと回答を頂きました。

また、一般に処方される動物用のお薬と比べて非常に高額な為、MUTIANの費用だけでもトータル60~150万円以上の費用が必要になります。概算で体重1kgにつき一日3,000~6,000円ほどの費用が治療期間分(通常84日間)必要になります。

MUTIAN Xカプセルの成分

(注)主にサプリメントとして使われている成分が多いため、具体的な効能は不明です。

  • Crocin・・・(和名)クロシン・クロチン。クチナシの果実やサフランに含まれる色素。抗酸化作用(活性酸素を除去し、細胞の老化を防いだりする作用)があるようです。
  • Nictinamide Mononucleotide・・・(和名)ニコチンアミド モノヌクレオチド。NMNとして人間用にサプリメントが販売されています。ネットでの検索ですが、はっきりした効果は見つかりませんでした。
  • Silymarin・・・(和名)シリマリン。マリアアザミ(英名:ミルクシスル)に含まれる成分。動物用では肝臓用サプリメントとして使われることがあります。
  • S-Adenosylmetionine・・・SAMe(サミー)と呼ばれ10年以上前から動物用の肝臓に対する有効性が評価されている製品です。シリマリンとともに肝臓用の動物サプリメントでは主要な成分です。
  • MUTIAN X・・・商品名にもなっているメインの成分。ヌクレオシド系抗ウイルス薬。
  • Microcrystalline cellulose・・・微結晶性セルロース?。食品の増量剤として俗にいう「つなぎ」の役割をします。特に効能はありません。