MUTIAN(ムティアン)によるFIP最新治療

の飼い主様に朗報です。

世間では連日、新型コロナの暗い話題ばかりですが、コロナウイルスは人間だけに感染するウイルスではなく、FIPを発症させる猫コロナウイルスも存在しています。

今回のコラムは長年、不治の病として治療法がなかった猫伝染性腹膜炎FIP:Feline infectious peritonitis)の新しい治療法がテーマです。今話題のMUTIAN(ムティアン)についても解説しています。

(注)2021年6月頃からカプセル→錠剤に変更になり、製品名もXraphconn(ラプコン)に変更になりました。錠剤も200、100、50㎎の規格があり、以前のカプセルと同等の効果が報告されています。

FIP(猫伝染性腹膜炎)ってどんな病気?

猫伝染性腹膜炎(FIP)とは

FIPの腹水

FIPは猫に持続的に感染している猫腸コロナウイルスが突然変異を起こして、強毒性のFIPウイルスになるという説が有力です。

お腹や胸に液体が貯まる(腹水や胸水)ウェットタイプやリンパ節・腎臓・脳・眼などに肉芽腫(にくげしゅ:慢性的な炎症に基づいて生じる腫瘤)を作るドライタイプなど多彩な症状を示し、ついには死に至る病気です。

1歳未満の若齢猫や8歳からのシニア猫に発生することが多く、ドライタイプに比べウェットタイプは非常に進行が早いため発見から10日ほどで急死してしまうケースもみられます。

FIPの症状

ウェットタイプ・・・腹水・胸水の貯留、持続性の発熱、食欲不振、貧血、黄疸
ドライタイプ・・・持続性の発熱(39~40℃以上)、貧血、内臓の肉芽腫性炎による多彩な症状(慢性的な下痢などの消化器症状、眼のブドウ膜炎、てんかん発作、腎不全、肝不全)
混合タイプ・・・腹水・胸水などあり一見ウェットタイプの様だが、腹部臓器に肉芽腫が見られウェットとドライのどちらの特徴もある病態。

FIPの診断法は?

以前は血液によるコロナウイルスの抗体検査を中心に行われていましたが、病原性の弱い腸コロナウイルスでも引っかかってしまうため精度が低く、誤診も多くありました。

最近ではヒトの新型コロナでご存知のPCR検査(遺伝子検査)の精度が高くなったため、α1AGやSAAなどの炎症マーカーや特徴的な臨床症状(腹水・胸水、持続性の発熱、黄疸など)を合わせることで以前より早期に精度の高いFIP診断が可能になりました。

 最新の診断方法は動物用検査会社のマルピーライフテックのホームページに掲載されています。こちらのリンクからどうぞ⇒FIP診断フローチャート

FIPに有効な治療法はあるのか?

 従来はステロイド剤やインターフェロンを中心にした症状緩和と進行抑制を期待する治療が主なものでした。効果は獣医師の間でも懐疑的でした。しかし、2019年カルフォルニア大学が論文発表した製剤(GS-441524)が最近のFIP治療で一番ホットな話題となっています。死亡率100%といわれるFIPに対して、なんと80%以上の長期生存を達成しました。

GS-441524ってどんな薬なのですか?

 2019年2月に獣医大学として有名なカルフォルニア大学デービス校のNiels Pedersen(ニールス・ペダーセン)教授の研究チームが、今まで治療法の見つかっていなかったFIPに対しての素晴らしい研究成果を発表しました。そちらがリンク先の論文になります。私も英語が苦手ですが、google翻訳機能でだいぶ内容が分かると思います。

『自然発生した猫伝染性腹膜炎の治療のためのヌクレオシド類似体GS-441524の有効性と安全性』

GS-441524はレムデシビルやタミフルなどを開発したギリアド・サイエンシズ社(Gilead Sciences Inc.)が創薬したヌクレオシド系抗ウイルス薬。人の新型コロナウイルスの治療薬として期待されている「レムデシビルGS-441524のプロドラッグ。

日本の動物病院で治療できるの?

 非常に残念なことにGS-441524を使った治療薬は製品化されていないため、製薬会社から購入することができません。また、今後製品化するかどうかもわかりません。

 では、私たちは不治の病であり、しかも発症から数日~2か月程度で亡くなってしまうFIPに対して指をくわえて見ていることしかできないのでしょうか。

 実は、中国の動物用医薬品会社がMUTIAN Xを有効成分としたMUTIAN(ムティアン)という製品を販売しています。国内ではお薬ではなくサプリメントとしての扱いですが、世界で数千の治験報告があり非常に期待されています。

FacebookにMUTIANで治療している飼主ネットワーク「FIP CAT JAPAN」があります。獣医師も参加している助け合いグループです。緊急時はグループに投稿してアドバイスを求めてください。

 MUTIANを取り扱う動物病院は全国的に増えています。FIPの治療経験が多いMUTIAN協力動物病院は千葉県のあおぞら動物病院の他にも北海道1件・宮城県1件・東京都4件・神奈川県1件・千葉県1件・埼玉県1件・大阪府1件・兵庫県2件・広島県1件・福岡県1件(2021年9月時点)があります。あおぞら動物病院では千葉県・茨城県・東京都東部地域の患者様を中心に年間100例ほどのFIP患者様を治療しております。

 原則、協力動物病院では連絡を取り合いMUTIAN治療の情報共有に努めております。協力動物病院で治療を行う場合は、FIP治療の経験豊富な獣医師に治療を受けられる他に、再発時に無償でMUTIANの提供を受けることが約束されています。

(注)新型コロナ(COVID-19)の影響で、海外からの物流が非常に悪くなっており、新規患者様の受け入れが難しい場合もあります。

必ず事前に電話連絡をお願いいたします。(2021年9月1日)

MUTIANの課題

 日本国内での扱いは未承認動物用医薬品となります。法令ではこちらの製品を販売・譲渡・広告することは違法行為となり罰則が科せられます。販売とは無診療でのネット販売や、個人間での薬の譲渡が該当します。また、クラウドファンディングやSNSで効能を広告することも違法行為となります。詳しくはこちらに。

 千葉県中央家畜保健所に問い合わせたところ、動物病院での治療のための処方問題ないとの回答を頂いております。

 仕方のないことですが、未承認薬であるが故の安全性や法律的な不安から、MUTIANやその治療を行っている猫オーナー様に対しても拒絶反応(診療拒否)を示す獣医師も多く存在します。

 また、未承認薬であるが故に情報が共有されておらず、入手ルートが不明瞭であったり、使用方法も不確かなので、MUTIAN取り扱い病院の中には独自の治療方法でMUTIANを使用して十分な効果を発揮できないでいるケースも報告されています。

 中国から個別での輸入になりますので、様々な理由で輸入がストップする可能性も否めません(実際に過去にも様々な理由で流通が停滞したことがあります)。

 一般に処方される動物用のお薬と比べて非常に高額な為、治療総額が100~200万円以上になります。概算で体重1kgにつき一日3,000~6,000円ほどの費用が治療期間分(通常84日間)必要になります。

FIP治療の将来

 世界中で新型コロナウイルスの研究が急速に進んでいる恩恵で、獣医大学でもFIPの治療研究が加速しています。

 ヒトの新型コロナの治療薬(レムデシビル:Remdesivir)がオーストラリアでは合法的なお薬としてFIPの猫ちゃんの治療で使われ始めています。ある報告では400例以上のケースで有効率85~90%とも報告されています。まだまだ高価なお薬であることと、日本で獣医師が入手・使用できるかどうかの課題はありますが、レムデシビルの入手ができれば身近な動物病院でFIPが治療できることは間違いありません。さらに10年ほど先の未来ではジェネリック医薬品の発売で、ぐっと身近なお薬になるのではないかと予想されます。

 人間が新型コロナの不安から解放された未来には、きっと猫ちゃんたちの不治の病であるFIPが過去の病気になっているのではないでしょうか。また、今まで儚く散っていったいくつもの小さき命が報われる日が来ることを願ってやみません。