FIP治療の最新事情~不治の病に希望の光が

の飼い主様に朗報です。

世間では中国からの新型肺炎の話題で持ちきりですが、原因となっているコロナウイルスは人間だけに感染するウイルスではなく、動物はそれぞれ特有のコロナウイルスを持っています。動物病院に来院される動物では犬の6種混合ワクチンにも含まれていますし、ウサギやフェレットにもコロナウイルスを原因とした感染症があります。

今回のコラムは長年、不治の病として治療法がなかった猫ちゃんの猫伝染性腹膜炎FIP:Feline infectious peritonitis)がテーマです。こちらは猫に持続的に感染しているコロナウイルスが突然変異を起こして強毒性のFIPウイルスになるという説が有力ですが、実はまだはっきりとしていないことも多い病気です。

FIP(猫伝染性腹膜炎)ってどんな病気?

こちらは、かなり長くなりますので、あおぞら動物病院の病気紹介にリンクを張っておきます。ご覧になってください。

関連記事:猫の伝染性腹膜炎(FIP)の診断と最新治療【2020年】

GS-441524ってどんな薬なのですか?

2019年2月に獣医大学として有名なカルフォルニア大学デービス校の研究チームが素晴らしい研究成果を発表しました。そちらがリンク先の論文になります。私も英語が苦手ですが、google翻訳機能でだいぶ意味が分かると思います。

『自然発生した猫伝染性腹膜炎の治療のためのヌクレオシド類似体GS-441524の有効性と安全性』

GS-441524はインフルエンザ治療で有名なタミフルの成分(オセルタミビル)などを開発したギリアド・サイエンシズ・インク(Gilead Sciences Inc.)が創薬したヌクレオシド類似体(ヌクレオシド系抗ウイルス薬)です。

日本の動物病院で治療できるの?

まだ製品化されていないため、国内では製薬会社から購入することができません。アメリカで商品化されても、数年しないと日本に入ってこないのが動物用医薬品の宿命です。通常、海外で発売されてから日本で正規ルートで購入できるまで3~5年ほどかかります。

では、私たちは不治の病であり、しかも発症から数日~2か月程度で亡くなってしまうにFIP対して指をくわえて見ていることしかできないのでしょうか。

実は、中国にあるMUTIAN(ムティアン)という動物用医薬品会社がMUTIAN Xという製品名でカプセル剤を販売しています。ただし、MUTIAN社はそれがGS-441524であるとは公言しておりません。アメリカで論文発表されているGS-441524は注射ですが、MUTIANは経口投与が可能なカプセルタイプが主流です。

MUTIANを即時処方できる動物病院はMUTIAN協力病院と呼ばれており、徐々に参加する動物病院も増えていきそうな気配です。また、かかりつけの獣医師と協力して、販売先から個人輸入で入手することも可能です(あくまで自己責任となります)。

MUTIANの課題

日本国内では未承認の動物用医薬品になります。法令ではこちらの製品を販売・譲渡することは違法行為となり、これを獣医師が行えば獣医師免許の剥奪もあるようです。

中央家畜保健所に問い合わせたところ、動物病院での治療のための処方問題ないと正式に回答を頂きました。販売とは無診療でのネット販売や、個人間での薬の譲渡はもちろん違法となります。また、こちらの効能などをブログやSNSで広告することも法律に違反します。国家資格を与えられた獣医師は、厳重な注意の元法令順守を徹底しなければなりません。

また、国内未承認動物用医薬品であるため、入手するためにお薬代だけで最低50~150万円以上の費用が必要になります。

MUTIANについてもっと知りたい

できるだけ当院でも情報発信していきたいのですが、法律上広告とならないよう規制もあります。ですので、Facebookグループで本気でFIPと戦っている飼主様のグループを紹介いたします。

MUTIAN使用を前提としていますが、実際にFIPと戦っている飼主様同士が最新の情報をやり取りされています。MUTIANを使って治療しているMUITIAN協力病院のリストや、実際の経験を生かしたアドバイスなど、獣医師の私も勉強させていただいております。ぜひ参加してみてはいかがでしょうか。

URL⇒ MUTIAN JP

MUTIAN Xカプセルの成分

(注)主にサプリメントとして使われている成分が多いため、具体的な効能は不明です。

  • Crocin・・・(和名)クロシン・クロチン。クチナシの果実やサフランに含まれる色素。抗酸化作用(活性酸素を除去し、細胞の老化を防いだりする作用)があるようです。
  • Nictinamide Mononucleotide・・・(和名)ニコチンアミド モノヌクレオチド。NMNとして人間用にサプリメントが販売されています。ネットでの検索ですが、はっきりした効果は見つかりませんでした。
  • Silymarin・・・(和名)シリマリン。マリアアザミ(英名:ミルクシスル)に含まれる成分。動物用では肝臓用サプリメントとして使われることがあります。
  • S-Adenosylmetionine・・・SAMe(サミー)と呼ばれ10年以上前から動物用の肝臓に対する有効性が評価されている製品です。シリマリンとともに肝臓用の動物サプリメントでは主要な成分です。
  • MUTIAN X・・・商品名にもなっているメインの成分。GS-441524と同じヌクレオシド類似体(ヌクレオシド系抗ウイルス薬)。
  • Microcrystalline cellulose・・・微結晶性セルロース?。食品の増量剤として俗にいう「つなぎ」の役割をします。特に効能はありません。