開業以来10年間、旧製品のバリオス(Varios)350を使い続けていましたが、ついに故障してしまい上位機種のバリオス970に買い替えました。
バリオス350も奮発してライト付きのものを購入したのですが、水が通るシリコンチューブの劣化で本体内部に漏水が起こり壊れてしまいました。またしばらくしてハンドピースコード内でも漏水が見られました。
一度劣化して穴の開いたシリコンチューブを短縮して応急処置をしたのですが、水圧がかかる部品なので1年もしないうちに再発して基板がショートしてしまいました。
新型のバリオス370はハンドピースコード単体での交換ができるようなので、350に比べると修理できる部分が増えましたが970のように内部の交換用ポンプが用意されているわけではないので、耐久性には不安が残ります。
バリオス970とバリオス370との相違点
簡易式のバリオス370と上位機種のバリオス970は価格面で大きな差があります。
バリオス370(ライト付き)・・・標準価格200,000円
バリオス970(ライト付き)・・・標準価格286,000円
一番の違いは、バリオス970が注水ボトルが備わっていることです。
超音波スケーラーの先は非常に熱を持つので、大量の水で冷却する必要があるのですが、バリオス370は給水ボトルによる給水システムがないため、水道の近くか専用の給水タンクが必要になります。この給水タンクは手動でタンク内に圧力を加える仕組みなのですが、処置中に頻繁に手を止めてタンクにポンピングするのはなかなかのストレスです。
バリオス970は2本の給水ボトルから給水できるのですが、実際には2本目のボトルに切り替える前にスケーリング処置が終わります。もう一方に消毒液を入れて切り替えて治療することもできます。当院では水道水の代わりにAP水を使用しています。
また、アナログから表示がデジタルになりましたが、それほど操作性には影響しない変更です。
動物病院の医療機器としてはそれほど高価な部類の設備ではありませんが、ペットの高齢化で歯科治療を行う機会が多くなってきたので、ストレスなしで行えて動物の麻酔時間も短縮できるなら多少の出費は気にしなくても良いのではないでしょうか。
バリオス970を使ってみて
やはり、歯石除去の処置が楽になりました。給水の作業が自動になったことが大きいですが、LEDライトによる視野の確保は非常にありがたいです。
5万円ほどの価格差でライトなしのものが手に入りますが、購入するなら絶対にライト付きのものをお勧めします。ライトの耐久性も使用頻度によると思いますが、バリオス350では10年以上ライト交換の必要はありませんでした。
また、動物セットでは抜歯処置に使いやすい歯根膜剥離用チップ(オサダの製品名ではゴルツチップ)が標準で付属していることと、猫の尿道結石用チップも別売りですが使用できるため、歯石除去以外にも活躍する医療機器です。
Perio Endo General のモードの違い(使い分け)について
Perio Endo Generalの3つのモードがありますが、それぞれ歯科用語で以下のような意味があるようです。
Perio・・・歯周病
Endo・・・Endodontic treatment・・・歯髄(歯の中の神経や血管などの組織)の治療。根管治療。
General・・・これは歯科用語にはなく直訳通り「一般的な」ということでしょうか。
ナカニシさんに直接聞いてみたところ、Perioモードは主に歯と歯茎の間の歯周ポケットをスケーリングする際に使用するモードとのことです。Pモード専用のチップを最強のGモードで使用するとチップが破損するために、動物用セットではPモードチップはオプションになっているそうです。
Endoモードは主に、人の歯髄を拡大するために使用するモードだとのことです。最近は歯科に力を入れている動物病院もありますので、そのような場合に使用します。
一般的に動物病院で歯冠の歯石を除去する場合はGモードを使ってくださいとのことです。もちろん、Pモードの出力を上げても良いのですが、Gモードがちょうど良いようです。
超音波スケーラーで汚れた10円玉を磨いてみると、表面に傷ができていることに気づきます。高出力の方が、歯石も早く取れて時間短縮になるのですが、医療用といえども金属に傷をつけるほどのパワーがあるので、必ず低出力からはじめてください。
ちなみに尿道結成の粉砕用チップはPモードあるいはEモードの弱い出力から使用してくださいとなっています。
旧製品バリオス350を紹介
ナカニシ製の超音波スケーラー バリオス350です。現在はこのモデルは生産していないようでバリオス370が現行品のようです。
現行品と違い、本体とハンドピースコードが一体式なので、ハンドピースコード内での漏水や断線が起こった場合、本体ごと修理をしなければなりません。恐らくそういった理由で、現行品はハンドピースコードが分離しているのだと思います。
動物病院で行う歯石除去はこの超音波式スケーラーで大きな歯石の除去と、歯周ポケットのクリーニングをはじめに行います。この製品の優れているところは、スケーラーの先からLEDのライトが照らしてくれるので、口の奥の方の作業がしやすくなることです。
最近ではニッチな商売として、トリマーによる無資格・無麻酔での歯石除去が話題にもなるようですが、歯石除去といっても、重症な場合に歯が抜けてしまう事故や、歯周ポケット内の歯石が取れないため、見た目だけの美容にしかなっていないように思われます。
獣医師の立場としては、何かトラブルが起きないかどうか非常に心配なのですが、ペットブームの衰退によってペットを取り巻く産業が変わってきていることも実感いたします。
使用頻度 普通
お気に入り度 普通(ライトなしにはもう戻れない)