小型犬を飼われている方は、ワンちゃんの肛門腺絞りをトリミング美容院や動物病院で行った経験があると思います。肛門の位置を時計に例えると左右4時と8時方向の皮膚の下に肛門嚢という袋状の器官が犬だけでなく肉食動物とげっ歯類にあります。スカンクが強烈な臭いの肛門腺を貯めているのも有名ですね。
通常は意識して絞らなくても、排便時に肛門の力が入ると少しずつ排泄される仕組みになっているので、絞らない≒肛門嚢破裂にはなりませんが、定期的に肛門嚢の炎症を起こして破裂してしまう犬猫さんがいます。
1度なら事故ですむのですが、3度も4度も繰り返すと、動物もかわいそうです。最終的に肛門嚢の排泄ルートが閉塞してしまい、絞っても出なくなってしまうことがあります。その場合、早いと1か月もしないうちに破裂してお尻の下の皮膚に穴が開いて血膿が出てきてしまいます。
このような状態になりますと、手術をして肛門嚢を摘出する以外の治療法が無くなってしまいますが、幸い肛門嚢は犬猫にとってそれほど重要ではない器官なので、摘出することでの悪影響はありません。
逆に摘出することによって、肛門嚢炎の再発や、煩わしい肛門腺絞りから解放されますのでメリットも多いかと思います。
予防目的で行ったことはありませんが、当院では年間5例ほどこの手術を実施しています。
手術自体の難易度はそれほど高くないのですが、今回ご紹介する『アナルサック・ゲル・キット』があると、手術は大変行いやすくなります。
このキットの使い方ですが、簡単に説明しますと、熱湯で柔らかくした緑色や白色のゲル(消しゴムのような弾力)を肛門嚢の入り口から注入します。このことにより、手術中に肛門嚢を確認しやすくすることと、熱いゲルを注入することにより毛細血管を焼烙することにより出血を抑えることができます。緑色のゲルの方が見やすかったのですが、現在は白いゲルしか見つからないのが残念です。
このキットですが、現在取り扱いがなくなってしまったようです。以前は比較的購入が容易でしたが、需要が少ないからでしょうか、キットの販売がなくなってしまいました。
輸入販売元はユナイテッド貿易株式会社という業者さんが行っていましたが現在では消耗品の販売も終了してしまいました。
追記:2022年7月29日
調べてみると人間の歯科で使われる『寒天印象材カートリッジタイプ』というのを動物用に流用させているだけみたいな気がします。上記の画像はそちらになります。
製品名は『オムニカートリッジシリンジ』と『ハイドロスティック・リーガルグリーン シリンジタイプ』です。
探している先生はこちらを使われるとよさそうです。